○ サービス終了までの1年間

2004年12月27日、重大なお知らせがありました。
サービス終了が2005年4月に決定したという告知です。

1周年イベントから終了までは、色々な事がありました。

ビーチ、ハロウィン、クリスマスなど定番イベントも
前年と同様にあり、同様のアイテムが売られたため
期間限定レアがレアで無くなるという波瀾が起きました。

拍子抜けもしましたが、既に前年のイベントを知らない人が増え
素直に可愛いアイテムを喜ぶ人も多かったと思います。

毎月の全農イベントと別に、のぼりコレクター、やさいの日
アロハの実装など、今までと同じではない追加もありました。

のぼりは家具屋などお店のものも入れると数がとても多く
やはりclosetや、FSの肥やしになってしまいましたが
ユーザの要望メールが実現したような展開で実装される事になり
運営にユーザの声が届いているんだという好印象を持ちました。

それまでと趣向の違うイベントの中でも一番楽しかったのは
'04年11月上旬に行われた、秋の収穫祭イベントでした。

このイベントは100点満点だったわけではありません。
雑踏嫌いの、仙人のような人が多かったこすもぐでは
多人数での協力が必要なイベントは元々少し敬遠されました。

新人さんは盛り上がる集団に声をかけづらかったでしょうし
タイミング悪く参加すると、やる事が無くただ待つだけです。

課題を準備して戻ると、既に手配済みなのでいらないと言われ
傷つき、一部の人に独占された気持ちが湧く瞬間もあったでしょう。

誰かが仕切らないと進まない、なのに誰かが仕切れば角が立ち
良かれと思った事が、かえって誰かの努力を無駄にしてしまう。
システム上のそんな不都合は、こすもぐにはとても沢山ありました。

しかし、ワイワイガヤガヤと地面にマシンを置いて合成し
皆が自分の持ち物やスキルを持ち寄って協力するのは
いかにもお祭り騒ぎという感じで、とても楽しいものでした。

新しく来た人に手順を説明したりするうち、次の回が始まり
抜けるに抜けられず疲れ切る事が、逆にハイな状態を作り
初めて会う者同士の連帯感を高めてくれた気もします。

散歩場で石版を集めてバブーを3匹にできるようになったり
各種称号試験が実装されたり、'04年末からは実装ラッシュでした。

称号イベントは、最初から予定されていたシステムだったようで
中途半端なところで止まって、そのまま眠り続けていた部分が
突然起き出したように、次々とやる事が与えられました。

サービス終了を、予感していなかったわけではありません。

実装ペースの遅さに開発費や担当者の少なさを感じ
初期の頃から「いつ終わるの?」と皮肉混じりに会話しました。
いつ終わってもおかしくないと、常に言われていました。

パッケージ版の販売が終了しました。

バザーなどに人が集まらなくなり一層の過疎を感じていました。

そして半年課金という項目が、課金手続きから消えました。

そこへ来て、いつにない大型実装の連続です。
何かに追われ、慌てて片っ端から仕事する、嫌な匂いがしました。

でも本当に終わるとは思わなかったんです。
考えたくなかったから、思い込んだんです。

採算が取れるとは思えない過疎ぶりなのに1年以上続きました。

終わるどころか、タイアップ先まで現れました。

まだ不完全でも、最初と比べると完成度は大幅に高くなりました。

生産をメインにしたシミュレーションは、他にもありましたが
同じ味わいを持つMMOは、現れる気配がありませんでした。

だからきっと、ユーザには分からない特別な理由があり
大企業だから色んな人が居て、何かの会議の誰かの一声で
存続する事が決まったりするかもしれない…

そんな風に根拠があるフリをして、良い方向に期待して
今まで続いたんだから、ずっと続くかもしれない…よね?と
そう思い込もうとしていました。

人間は誰でもいずれ死ぬんだと当たり前に知っていても
まさか自分が今日死ぬとは思わない、そんな気持ちでしょうか。

そんなプレイヤーの淡い期待を裏切り、終了の告知はやってきました。

最後に「お金を払いたいのに払えない」事態も起きました。

無料期間が始まるのに合わせ、課金の調節をした人も居ましたし
課金してから気付き、無料期間開始までお休みする人も居ました。

いずれの場合も「ログインできない期間」が生まれてしまい
終了までに残された短い時間を有効に使いたくとも使えず
もどかしく、恨めしく、寂しく思わざるを得ませんでした。

フィナーレを彩る大きなイベントも用意されました。
早い者勝ちアイテムコンテストと、大抽選会です。

前者はNPCから出されるヒントから、答えのアイテムを推測し
最初に正解を提出した人が優勝、特典を受けられるものでした。

優勝なくしては「アストロ農家」の称号が得られないので
最初は沢山の人で賑わい、少し混乱した空気もありましたが
一通りの人が優勝してからは閑散とした状態でした。

と書くと楽しくなかったように聞こえてしまいますが
イベント内容は、予想以上によく練られて楽しいものでした。

早い者勝ちは、こすもぐ内の空気に馴染まないスタイルで
ここまでプレイして来たのに、最後の最後に集大成である称号を
そのスタイルのせいで得られない人が出てしまうのではないかと
イベントが始まる前には、ずいぶんと危惧しました。

しかし運営も、そのあたりについては思案したのでしょうか。
推測ですが、提出ペースや参加人数に合わせて出題数が増え
現プレイヤーに称号をもらうチャンスが、充分に行き渡る
回数になるように、調節してあるように見えました。

プレイが短い人も提出できる問題と、スキルが必要な問題とあり
課金を続ける事でゲームの存続に貢献してきたプレイヤーが
やや優遇される、バランス的にも悪くない出来でした。

出されるヒントはみな曖昧で、前後と脈絡が無いものが多く
いかにもこすもぐ的なナンセンスさが、楽しく愛おしく感じました。
「赤くない!!」と言われてもねぇ…と、頭を悩ませながらも
プレイヤーたちは、そんな事をキッカケに大いに笑いあいました。

優勝すると大抽選会用の福引き券がもらえたのですが
大抽選会後の、福引き券が不要となる3日間は
ファンをニヤリとさせる特別なアイテムがもらえました。

アストロノーカの世界を舞台にした、ジオラマ模型です。
かのゲームを未プレイの私も、それを見た時はニヤリとしました。

終了の予定も無く、福引きなど想定していなかった頃に考えられた
本来の、ご褒美アイテムだったのかもしれません。

キャリア称号が実装された最後の期間は、追加されたアイテムも
コンテストのご褒美アイテムなども、MuuMuu色が強く
原点回帰と、こすもぐへの愛を感じさせるものが多くありました。

終了が発表されてから、最終日までの期間はまるで
余命を宣告された、病人のような心境でした。

どうせ終わってしまうなら、もう何をしたところで意味が無いと
自ら終止符を打つことを選択し、姿を消す人も居ました。

終わる事を受け入れられず、何をしたら良いのか分からなくなり
パニックのようにオロオロし続けた人も居ました。

ただ運命を静かに受け入れて、今までと変わらぬ生活を繰り返し
さよならをする準備を心に作っていった人も居ました。

寂しさを追いやるかのように終わる事をネタにして騒ぎ
お金やアイテムを使い果たして、楽しもうとする人も居ました。

心残りの無いように、やり残したことは無いかと探し回り
無心に、最後のゲーム攻略に努めた人も居ました。

私は…どうだったのでしょう。
多分、その全ての気持ちを同時に持ち続けていたと思います。

アストロノーカのジオラマが、最後の最後に特別な告知もなく
ひっそりと実装され、配られた事を知った時
それが、こすもぐを生んだ制作者、こすもぐを守ってきた運営者
そして、こすもぐを愛したプレイヤー達からの
今消えてゆこうとする、この愛すべきゲームに対する
オマージュのように感じ、胸に迫りました。

泣いても笑っても時間は経ち、大抽選会の日が来ました。

券を専用マシンにドラッグするとその場で当たりハズレが分かる仕様で
終わった人が冷やかしで待ち構えて居たので、盛り上がりました。

GMがプロレスのマスクをかぶった姿で、鯖を巡回して開催
久しぶりに直接GMと話せるシチュエーションに思わず
「こすもぐ終わっちゃヤダ」と本音をぶつけてしまいました。

当然ながらそれでも日付は進み、最終日が来ました。

パークでは、セントラル農協前に沢山の人が集まり
賑やかに騒ぐことで、少しだけ寂しさを忘れる事が出来ました。

私の急でワガママな招集告知に乗って下さった皆さんに
この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

自宅で過ごすか、想い出の場所へ出向くか、皆で集まるか
最後まで悩み、出来ることならその全てをしたい気持ちでした。

朝までサイト用のデータを採取し、昼からは大切な友人と
今までそうしてきたように家の前に座り
特に何をするわけでもなく、マッタリと一緒に過ごしました。

そして、その友人と最初に仲良くなったビーチへ向かい
時間が止まってしまう事を祈りながら、二人で過ごしました。

皆さんは最後の瞬間を、どう過ごしたのでしょうか。

予定時刻通りサーバとの接続が切れるという、誰も望まない形で
こすもぐの時間は本当に止まりました。

もし最初から、今ある全てが実装されていたら…
せめて最初の3ヶ月ほどで一気に進んでいたら…
毎日毎日、そんな考えても仕方ない事を考えていました。

でも、こすもぐはこすもぐです。
きっともし最初から、最終日にあった完成度だったら
またそれは、別のゲームになっていたんだろうと思います。

やる事が無かった不幸は、こすもぐからプレイヤーを奪い
最終的には、プレイヤーからこすもぐを奪いました。
しかしプレイヤーたちに、沢山の幸福な時間も与えてくれました。

このこすもぐがあったから、この友人たちと出会い
あの日々があり、私はずっとこすもぐを好きで居られたのです。

今も目に焼き付いている、景色、我が家、友達の姿、バブー達、沢山の野菜
皆と迎えた最後の瞬間を、それはそれとして、そのままの姿で
一生忘れる事なく大切に持ち続けていきたいと
今は、静かに思い返しています。

 シマイモノーカ管理人 まろ