○ 相撲の実装
相撲はこの頃、プレイヤーの希望の星でした。
サービス開始前から存在が発表されていて
とても楽しい機能だという宣伝も繰り返されていて
最後の大型実装だと、この時まで誰もが思っていました。
集客に使われる、実装予定の機能について語った場合
大手のMMOは、課金スタート時というのは80点〜90点で
最初の数ヶ月で100点=最初に完成とされていた段階、に達し
そこから先は、ユーザの希望は常に数百点先の位置にあり
運営が小さな修正で5点ずつ、大型実装で50点ずつ、と
「もっともっと」と増えていくユーザの希望を追う形で
新しい機能を増やしていくスタンスが一般的だと思います。
こすもぐはその部分が一番、大手MMOと顕著に違いました。
スタート時はほぼ0点で、2年経って終了する時まで
結局100点には到達しないままだったのです。
なのに2年間続き、愛されたという点で異色かもしれません。
相撲が実装されるのを見届けるまでは辞められない。
そう語るうちに意地になってきて、実際に待ち続けて
その常套句が挨拶代わりになってきて、苦笑しあう…
相撲は初期から居るプレイヤーにとって、そんな存在でした。
どんなシステムなのか発表がなく妄想が膨らみましたし
何度も何度も実装が延期されて、かえってその事で
必要以上に多大な期待感を背負うことになりました。
しかし、それまでのペースの遅い実装と
繰り返される有言「不」実行に飽き飽きしていた人たちには
こすもぐのダメさ、運営の不誠実さを象徴するものと映り
常に批判のやり玉に挙げられるウィークポイントでもありました。
このままうやむやになってサービス終了じゃないか?と諦めた頃
降って湧いたように突然、実装の告知が来たのです。
この頃はまだ、こすもぐに未練を残した引退者が
他のネトゲに移住した後も新しい実装があるとフラリと現れて
1〜2度ログインして、また消える事がありました。
特に相撲の実装には象徴的な意味合いがありましたから
何人かはすぐに復帰して、その出来具合を確かめていました。
復帰者も含めたプレイヤーの反応は様々…と言いたい所ですが
数日後には一極化してしまったように思います。
何度もプレイしてコツが分かってくると結構ハマる。
みんなでワイワイやってみると、すごく盛り上がる。
もしかしたら横綱になった時にご褒美があるのかも?
けれど…
何ヶ月も待たせて、このくらいの楽しさなの?
素人目には単純で地味に見えるのに、なんで時間かかったの?
武道館に行って先客が居るとなんだか気まずい…
私自身そう感じ、周囲にもそう感じた人が多かったようです。
CPUの使用率が増し、動きがカクカクしてしまうという
目立った不具合がオマケで付いてきたことも追い打ちをかけ
ほとんどの人がすぐに飽きてしまい、普段の生活に戻りました。
せめて野菜が劇的に増えて賑わっていた頃であれば
各地で大会が自然発生し、もっと歓迎されたかもしれません。
過疎化してからも残ったプレイヤーは、競争する事を避け
マイペースで過ごす事を愛した人が多かったように思います。
狭い世界で、お互いに気を使い合う必要もありました。
ランクが上がったバブーが弱い対戦相手に負けると
大きくポイントが減り、ランクが下がってしまうという仕様も
そんなプレイヤーの気質には馴染まなかったかもしれません。
そういった感情面での感想ではなく中立的に批評をすると
ランクが下がる事も含め、ゲームバランスはなかなか良く
じゃんけんのように単純で分かりやすい楽しさもありました。
一時的にいくつかの大きな相撲大会が開かれ、一旦姿を消し
少し経ってから定期的な開催も始まり、定着しました。
待ちに待っていた機能だった頃は引導を渡されてしまい
景色の一部のようになってからは、少しだけ本領を発揮した相撲。
やはり、こすもぐの辿った切ない運命に思いを馳せてしまいます。