○ 野菜調査員と地下世界の実装

こすもぐ10大ニュースを決めるとしたら、これが1位でしょう。
そのくらい衝撃的な発表と、新実装があった日でした。

新実装の内容は、マーマレードとカリントの野菜調査員試験です。

でも、イモ球とコスモニンジンの課題に皆が首を傾げました。
種はどうやって手に入れるの?それとも未実装で攻略不可能?
まだ「変異」という発想が無かったんです。

種同士の合成で作る、未実装の村で売られる、発見で見付けるなど
存在するはずなのに見付からない、新しい種に関して噂が流れました。

その問いに答えたのは意外にも、公式サイトのFAQページでした。
突然FAQにバブーダンス効果への説明が追加され
種増殖、病気治療、変異の、三種の神器ステップが発表されたのです。

じゃあこのステップを踊れるのはどのバブーか?
のちに変態ダンスだけでも変異が出来る事が確認されましたが
正式な変異ステップを踊れるのは、バブッパだけ。

当時バブーは1匹ずつで、しかも皆見た目で選んでいましたから
この三種のダンスを全て踊れる唯一のバブー、バブッパは
飼い主の数が少ないこともあり、神様扱いになりました。

仲間内にバブッパ所有者が居た事で、私と友人たちも大いに興奮。
早速種を植え、変異ステップを踊り、新しい芽が出る姿に感動し
意気揚々と課題を提出しに行きました。

そして所持バブーを増やせるようになって
皆が揃いも揃ってバブッパをセカンドバブーにする時代が来ました。

私も捕獲スキルを上げる修行に出て、早速バブッパを捕まえましたが
久しぶりに訪れた「どのバブーにしようかな」と考える機会に
とにかくワクワクして、色を選ぶだけでも数日かけました。

地下の開放、所持バブーの追加が調査員課題のご褒美でしたが
本当に衝撃的だったのは、変異によるアイテムの爆発的増加です。

実は初期の頃、こすもぐを解析したプレイヤーが居たそうです。
種から家具から、どんなアイテムがこれから実装されるのか
プログラムの中身から情報を解析して、Web上に発表したのです。

もちろんこれは明らかな規約違反行為で
攻略を楽しむ人にとっては、邪魔な情報にもなり得るものです。

しかし待ちくたびれたプレイヤーも多かったこすもぐでは
これが全て実装されるまでは辞めない!と
モチベーションを高めるのに一役買った面もあったようです。

こすもぐらしい話ですが、そのリストに載っていたのに
結局最後までレシピが不明で、未実装と思われるものもありました。

私はずっと自力攻略を楽しむために他のサイトを全く見ないで居たので
そんなリストが存在した事に、全く気づきもしませんでした。

そして何故これから沢山の種が実装される事を知る人が居るのか
不思議に思いながら、マイペースで攻略していました。

そう、こすもぐには元から沢山のアイテムがあったんです。
2倍や3倍ではなく、それまでの10倍100倍単位の数です。

データ自体が無かったわけではなく、計画が無かったわけでもなく
アイテムを作るためには材料が必要、その材料のために種が必要
種のためにはダンスが必要、ダンスのためには散歩が必要…

そんな風に辿った、手前の部分での開発の行き詰まりが
結果的に作られるアイテムの数を大きく制限していたのです。

遅すぎる開発ペースに業を煮やして引退してしまう人の姿は
金の鉱脈の上に暮らしているのに、掘る手段を持たないせいで
日々の貧困に苦しみ、他の土地へ越してしまうかのようです。

金は掘り出されたけれど、時既に遅し。

実験好きな私はレシピ探しが楽しくて仕方ありませんでしたが
ヤリコミプレイに興味のない友人たちの決意は、既に固まっていました。
遊びの要素は以前と同じですから、アイテム増加などは焼け石に水。
アイテムが出尽くした感は、尚更に引退者を増やした部分もありました。

運営をしていたのは、世界を代表する屈指のゲーム会社ですから
プログラミングの技術力で不足があるはずもありません。
でも、こすもぐの開発とバグ修正のペースはとても遅く
開発費や、スタッフ数が少ない事を素人目にも感じる状態でした。

最初のうちは機能を出し惜しみする事でユーザ確保をしていると
私を含めた多数のユーザが考え、批判的に感じていました。
けれどこの時からは、なんだかこすもぐが可哀想に思えました。

もしENIXとSQUAREが合併していなければ
もっと充分な準備の末に世に出て、良い評価を受けたのかな?

もしクライアントが無料で、月額料金を多くしていれば
開発費とサーバのパワーがもっと増えて、早いペースで完成したのかな?
もし…もし…

きっとその「もし」が叶っても、別の場所で不満は生まれたでしょう。

どうせ新しい家具を作っても荷物が一杯で持ちきれない
自分はレシピ探しには興味が無い、種に土壌を合わせるのが面倒
地下世界も地上と大差無かった、相撲も待つほどのものじゃないかも?
最近バザーの空気がピリピリしてて…

様々な理由から、数週間の間に友達が1人、また1人と去りました。

私は一生懸命に友達の引退を引き留めていました。

それがもうあまり効果の無いもので、むしろ困らせる事だと知りつつ
どうしようもなく寂しくて、スネていました。
残留を決めた沢山の人たちが、スネてしまっていました。

こすもぐというゲームのシステムに合っていた人。
合っていたわけではないけど、楽しめたからここまで残っていた人。

この調査員の実装と、それに伴う大量のアイテム実装は
その差をあぶり出して、過疎化と対立を進める事になりました。